タクシーに搭載し、走行中に上海市のPM2.5を測定
今年の秋・冬、大気汚染が深刻化しているなか、PM2.5のモニタリングが再び注目された。一般的に、PM2.5に対するモニタリングのデータは、政府が設置したモニター端末から収集されている。モニター端末は固定場所に設置されており、上海を例にした場合は6340平方キロメートルの面積における国家レベルの常時観測端末は10箇所あり、市レベルの常時観測端末は16箇所ある。
上海市同済大学譚洪衛教授チームが進めているタクシーモバイルプラットフォームの粒子状物質モニタリングプロジェクトは2017年12月より試行していた。第1陣はタクシー30台が1秒毎に観測データを取得し、一日で市街地の車道98%以上をカバーしたのであった。PM2.5とPM10を同時に観測し、位置とモニタリングデータをリアルタイムで伝送することで、タクシーを大気観測の新たなプラットフォームとした。これには高精度車載粒子状物質モニタリングシステムを利用し、設備はレーザー検査・測定の原理に基づき、タクシーのルーフに取り付けられた。高温・高速・振動・強風・雨雪などの過酷な環境にも影響されないと言う。
「モニタリング端末によって密集した町やコミュニティー空間を覆い尽くし、リアルタイム性の高いPM2.5モニタリングを実現したい。」と考えた同済大学譚洪衛教授チームは、この三年間に設備をドローンに搭載,自動車に搭載、そして固定点での三位一体の都市空気環境空間モニタリングネットワークを構築する発想をした。それと同時に山東大学の司書春副教授のチームからも支持を取得した。

同済大学緑色建築及び新能源研究中心 常務副主任,同済国際緑色産業創新中心 センター長 譚洪衛教授

山東大学 司書春副教授
譚洪衛教授は、「タクシーモバイルプラットフォームの粒子状物質モニタリングにおいては、毎日大量の都市地面空気環境データの収集が可能となり、都市に於ける大気汚染防止の詳細管理に対して技術支援が提供出来る。たとえば、建築現場の近くや工場エリア,飲食店町等々においては、リアルタイムにPM2.5を測定し、これによって環境保護部門は迅速にこの対象となる建築物に対して空気環境質量の監督管理を強化させる事が出来、また測定値に応じた対策を実施することが可能となる。これは固定モニター端末では実現できない良いアイデア。」だと言っている。
すでに、「タクシーモバイルプラットフォーム粒子状物質モニタリングの自主研究開発は成功し、済南、上海の一部分のタクシーにおいて運営を開始した。

(図:赤い点が固定モニタステーション、青い線は移動式モニター)

(図: 環境モニター端末で測定したデータを紹介している譚洪衛教授)
さらに「タクシーモバイルプラットフォーム粒子状物質モニタリングシステムを通して、都市空気汚染の1年を通じ季節を通した傾向が把握しやすくなった。譚洪衛教授チームは測定したデータに基づいて、「上海に於ける四季時間ごとのPM2.5濃度図」を作った。

(図:上海に於ける四季の時間ごとのPM2.5濃度図)
タクシーモバイルプラットフォーム粒子状物質モニタリングシステムのデータに基づいて、上海に於ける、PM2.5濃度の特徴が明らかになった。人口密度及び工場立地などの関係により、「都市中心から郊外にかけては次第に減少する」と言う傾向にはなっておらず、おおよそ「都市と郊外は同じで、東は西より良い」と言う結果になった。また、平日混んでいる道路のPM2.5の濃度は周辺地域と比べてさほど高くなかった。これらの特徴は、今まで行ってきた固定点でのモニタリングステーションでは導き出せなかったと言える。

(図:上海に於ける日ごとPM2.5濃度、2018年1月)
譚洪衛教授は「タクシーモバイルプラットフォーム粒子状物質モニタリングシステムにより、室外空気質量に対するモニタリングを行うと同時に、室内空気質量の研究にも取り組んでいる。現在室外定点モニタリングから始まり、移動モニタリング(都市公共交通、シェア自転車)、そしてドローンを使った空中巡回モニタリングまで、地面から空中まで立体的な環境モニタリングネットワークを作って、居住環境の改善のために力を尽くす。」と言っている。